ポオ(黄金虫) 読書感想
今回はポオの「黄金虫」について書きます。この作品はあまりにも有名ですから、わざわざ僕が説明する必要もないのですが、大好きな作品ですから。
かなり昔にわくわくしながら読んだ記憶があります。しかし、内容はすっかり忘れていましたので、今回改めて読み返しました。(集英社文庫のE・A・ポー 丸谷才一訳)やはり面白かったです。本当に面白い小説は天才しか書けないと痛感いたしました。
まず話の舞台となっているのが、南カロナイナ州のサリヴァン島です。長さは三マイル。幅は四分の一マイル。矮林で湿地帯です。
登場人物は、
ぼく ─ レグランドの友人
ウィリアム・レグランド ─ サリヴァン島に住む由緒ある家系の男性。
ジュピター ─ 黒人でレグランドの使用人
ほぼこの三名のみのシンプルな人物構成です。
あらすじ
主人公のぼくはレグランドに会いにサリヴァン島へ行きます。アポなしの訪問です。レグラントは留守でしたが夕方になって帰宅します。
その日、レグラントは一匹の珍しい黄金虫を見つけ、それを捕まえるために時間を費やしました。
そしてレグラントは、帰宅途中、捕まえたお気に入りの黄金虫を知り合いの中尉に見せて、一晩預けることにしました。それはその中尉が、その黄金虫にいたく興味を持って、貸してほしいと言ったからです。
そんな具合だから、グラントは、友人のぼくもきっとその黄金虫に興味を持つだろうと虫の話をします。が、ぼくは特別虫などに興味はないのです。しかしレグラントは熱を持って説明します。
実物が手元にないので、レグラントは仕方なく紙にその虫の絵を描いて、ぼくに手渡します。
ぼくは見ますが、虫ではなく髑髏が描かれていました。
そのことを言うと、レグラントは驚きました。髑髏など描いた覚えがないからです。
実は、これにはわけがあります。ちょっとしたタイミングで偶然そうなったのです。要するにあぶり出しです。炉のそばにいたことで火の熱によって浮かび上がったのです。紙は羊皮紙といって大変丈夫なものでした。
その羊皮紙は虫を包むために使用したのですが、別に持って行ったわけではなく、虫を捕まえたその場に落ちていたのです。いえ、半分土に埋まっていたのをレグラントが引っ張りだしたものです。
このあたり一帯は、古くから海賊の活動範囲で、有名な海賊キッドが財宝を隠したという伝説がありました。髑髏は海賊のシンボルです。そして、よく見ると羊皮紙に何か数字の記号が書かれていました。山羊の絵もありますが、小山羊のことをキッドと言うそうです。
そういったことから、レグラントは閃きます。これは宝のありかを記したものではないかと。
それから約一か月後に、ジュピターがぼくの家に行きます。それはレグラントが、ジュピターを迎えによこしたのですが、わざわざ迎えによこすというのは、よっぽどのことですから、ぼくは心配して行ってみました。すると、レグラントは元気溌剌で、宝探しをしようと言うのです。
詳しいことを書くと、やぼになりますから書きませんが、謎の記号の解読や、宝を手に入れるまでの描写は、実に見事です。例の黄金虫を、さも意味ありげに使用しています。ミステリーとしても最上級のものです。ポオはやはりすごいですね。
今回は以上です。