読書感想 日本怪奇小説傑作集2

 今回はいつもの書評に戻りまして、タイトルにある日本怪奇傑作集2をいろいろな角度から書いていこうと思います。いろいろな角度と言いましたが、僕は普通の人と視点が違うので、変な角度からその作品を述べるつもりです。

 

 

 日本怪奇小説傑作集2は、創元推理文庫から2005年に発行された本です。16編が収録されています。傑作集ですから、どれもなかなかの出来です。その中で、とくに僕が面白いと思った作品をピックアップして、そのどこが面白かったかを書きます。

 

 1 逗子物語 橘外男

 

 逗子物語は、端的に言えば幽霊話です。中盤までは、よくある幽霊話かなと思っていましたが、ラストにかかる三分の一は、意表を突いた展開で、最後はほろっと来ます。

 幽霊話は根拠の弱い薄っぺらい作品になりやすいのですが、この作品は厚みがあります。

 橘外男は、そんなに有名な作家ではありませんが、ほかの小説も読んでみたいと思う、筆力を感じました。

 

 幻談 幸田露伴

 

 幸田露伴は百年以上前に生まれた作家で、五重塔という小説が有名です。僕は、まだその小説は読んでいませんが、一流作家なのでしょう、幻談を読めば、明らかです。釣りに関する話が、じつに巧みで面白いのです。

 ストーリーは、これといってありません。江戸の川で釣りをするだけのものです。しかし、最後の方が怪談となっていて、まるで落語を聞いているような趣がありました。実際僕は、これに似た落語を昔聞いたように思うのですが、記憶違いでしょうか。名人芸です。

 

 妖翳記  久生十蘭

 

 不二という若い女性が主人公です。が、視点は、その家庭教師の大学生です。

 この不二という女性は、非常に魅力があります。外見ではなく、そのボーイッシュな性格です。生き物を平然と殺してしまいます。それだけでなく、これまでに不二の家庭教師となった大学生が二人も死んでいるのです。しかも死因は不明です。

 その事実を知った私という家庭教師は、不二の犯行とほぼ断定し、自分もいつか不二に殺されるのではないかと懸念します。そして、その疑念を、なぜか自らの命を持って確認しようとするのです。不安と焦り。心の内面をよく描いています。最後は読者に想像をさせる手法をとっています。

 

 その木戸を通って  山本周五郎

 

 時代小説です。平松正四郎という武士の屋敷に、ある日、一人の娘がやってきます。この娘は自分が何者か、またなぜ正四郎の屋敷に来たのか、それさえ分からないのです。が、むげに追い払うのも気の毒と、そのまま正四郎の家で暮らします。

 しかし、婚約者のいる正四郎は困りました。そして、よくある疑いを持たれて、結局、その婚約は破棄されます。が、それと同時に、正四郎は情を持ったその娘と結婚し、子供もできます。何の問題もなく幸せな生活を送ります。

 山本周五郎の得意な人情噺です。

 ところが、悲しいことにその娘は、数年後、なぜか木戸を通って屋敷を去っていくのです。子供と謎を残したまま。

 その謎が解明できれば、読者としてはスカッとできるのですが、でも、なかなかの作品でした。

 

 今回は以上です。